新たなブラックハットSEOの登場。ホームページを一部貸す「サイト貸し」という手法について

地方の病院やクリニックのオーナーは「サイト貸し・サブディレクトリ貸し」に要注意!

2022年10月13日、Web業界に衝撃的なニュースが飛び込んできました。
それは、とある会社が「サイト貸し」という手法で美容医療のSEOをハックすることで莫大な利益を得ていたという記事です。

参考記事:https://suan.tokyo/affiliaters_branding/

それは地方の病院やクリニックのドメインを借りて、広告収益目的のブログサイトを運営するという手法でした。

例えば弊社のドメインは「https://sbwinc.co.jp/」ですが、「https://sbwinc.co.jp/beauty/」の様なURLでブログ記事を運営するということです。

2023年9月15日にサイト貸しビジネスについてGoogleからの公式見解が発表された件について追記しました。

2023年9月13日現在、サブディレクトリ貸しで運営されていた下記メディアはほぼリンク切れになっており、サイト自体を閉鎖してしまっているようです。

サイト貸しにはどういうメリットが?

サイトを借りる側の多くはブログサイトを運営しアクセス数を増やすことで、広告収益を得ることを目的としているのですが、サイト貸しにはどういうメリットがあるのでしょうか?

それはまずGoogleが検索順位を決定するためのガイドラインの1つであるYMYLというものを知っておく必要があります。

YMYLはYour Money or Your Life の頭文字を取った略称で、お金や健康などのジャンルを示すGoogleの検索品質評価ガイドラインに登場する言葉です。お金や健康などに関する情報は、人の生活や人生に大きく影響するジャンルのため、Googleはコンテンツの評価基準を厳格にし、より検索結果の品質を高めようとしています。
例えば重篤な病気にかかってしまい病状の回復方法がないかユーザーが検索した際、信憑性の欠ける情報が掲載されているサイトや、詐欺のような商材が販売されているサイトが上位表示されてしまうと大きな問題を引き起こす可能性があるのはイメージしやすいでしょう。そのようなことが起こらないようにYMYL領域では通常の評価基準よりも、より厳しい基準で評価を行っています。

引用:https://satori.marketing/marketing-blog/seo/what-is-ymyl/

簡単に言うと、お金や健康に関することは人生に大きく影響するため、通常の検索よりも評価の基準を厳格に定めたものです。

美容医療の分野においてもYMYLの対象となるので、その情報を掲載しているホームページの運営者や記事の執筆者がどれだけ信頼できるか、という部分が記事の検索順位に大きく関わってくるのです。

YMYLの転換点

ここでYMYLがより重要視されるようになった一つの事件を紹介します。

Welq騒動というものです。

WELQ騒動というのはDenaが運営していた医療系のブログサイトを中心として起こった騒動で、様々な病気に関する情報が掲載されていました。

WELQでは医療に関する情報を大量に発信することで、検索結果の上位表示を達成しアクセス数を伸ばすことで収益を得ていました。

しかし、WELQで発信されている情報というのは実際には医療関係者が執筆したものではなく1文字0.1円などで記事を書いてくれるようなフリーのライターを雇って執筆したもので、非常に信頼性が低く、場合によっては健康に被害があるような間違った内容が掲載されているということもありました。

上杉

例えば「ガンには水素水が有効!」といったとんでも医療のページが上位表示されていたことも有りました。

そこでWELQは多くのユーザーからバッシングを受けるようになり、ついにはサイト自体を閉鎖することになりました。

そして、この翌年の2017年にGoogleが検索エンジンのアップデートを行ったことで、WELQのような信頼性の低い情報を発信しているブログが検索結果で上位表示されないようになりました。

参考:https://ipeinc.jp/blog/welq/

新たな手法サイト貸し

そこで2021年頃から新たに問題になっているのがサイト貸しという手法です。

医療系のブログではその記事の信頼性というものがとても重要だということは先程も述べました。

サイト貸しの手法では、クリニックや病院のホームページのドメインを借りることで、そのドメインが元々持っている信頼性にのっかることで、これまた大量の医療系の情報を発信するブログを運営するということが行われています。

サイト貸しの問題点

そんな単純な方法でホームページの検索順位はあがるのでしょうか?
これについてはSEOの第一人者である辻さんの記事を紹介します。

寄生サイトは実際に順位が上がるのでしょうか?

はい、上がります。現状、多くのケースで順位上昇しています。
……中略
しかし、それはずっと続きません。その後の順位を追うと、多くのキーワードではこのように下落傾向が続いています。

今後もずっと徐々に落ち続けて検索結果で見なくなるか、コアアップデートのタイミングで大きく落ちる、という流れになると推測されます。

引用:https://webweb.hatenablog.com/blog/seo/para-site

まずサイト貸しをして収益の一部を受け取れたとしてもそれは短期間で終わる可能性が高いということです。

そして、このWELQ騒動と同じ様な流れは、Googleがアップデートを行いなんらかのペナルティを与える可能性も非常に高いということです。

ペナルティを受けたらサイト貸しをやめたらいいのでは?と思われる方もいるかも知れませんがそうではありません。

検索順位はドメインごとに内容を評価して決定されているので、サイト貸しで運営されていたブログの順位が下がった場合は、元のホームページの順位も下がります。

長年地方でクリニックや病院を営んでいる方は特になにもしなくてもホームページの検索順位はそれなりに高いかもしれませんが、それは長年運営していることによって蓄積された「信頼性」という資産を持っているからです。

サイト貸しによってこの資産を失う可能性があるのでサイト貸しの営業を受けた場合は必ず拒否してください。

グーグルの検知と順位調整が早まりつつある

先述の辻さんの記事でもあるようにサイト貸しを行ったとしても半永久的に恩恵を受けてれるわけではありせん。

2023年3月頃からサブディレクトリ貸しで運用を始めた医療系アフィリエイトサイトが7月13日から14日にかけて、検索順位が大きく下落させていることが界隈で話題となっています。

運用開始から4カ月程度での急激な順位下落です。グーグルはサブディレクトリ貸しのサイトを早い段階で検出しランキングの調整を行う事で、より信頼性の高い検索結果を提供することを目的としているのでしょう。

直近のアルゴリズムアップデートは2023年3月であることから、7月にはコアアルゴリズムアップデートが行われたわけではありません。

順位が下落した原因については確定的なものではありませんが、ある見解によれば、コアアルゴリズムのアップデートの前兆として調整が行われている可能性があります。

流行りの中古ドメイン運用も終焉か

中古ドメインとは、既に他の個人や企業が以前に使用していたが、現在は使用されていないドメインのことを指します。中古ドメインの特徴は、新しいドメインに比べて検索エンジンでのランキングや検索結果への影響があることです。過去に良い評価を持っていたり、多くのバックリンク被リンクを持っている場合、SEOの観点から有利になることがあります。

以前に私が見ていた中古ドメインを使ったアフィリエイトサイトのサーチコンソールのグラフになります。

医療系のYMYL領域のテーマではないため、本筋からは外れますが中古ドメインという点についてはサブディレクトリ貸しと通ずる部分はあるかと思います。

ドメイン取得後、数日間で上位表示することができアクセスもそれなりに集めていたのですが、1カ月経たないうちに、検索圏外に飛ばされやすい状態になりました。

決してスパム判定されるようなコンテンツの質ではなく、SEO対策もおこなった記事を投稿していました。

中古ドメイン運用に関しても短期的には良いかもしれませんが、いずれはグーグルから検知され使い物にならないドメインになってしまうかもしれませんね。

参考:https://www.youtube.com/watch?v=l4QHwA25slA

検索順位を上げるためのたったひとつの方法

検索順位を上げるためには「見る人にとって価値のある情報を提供すること」のみです。

低品質な記事を量産して検索順位をあげられたとしてもそれは必ずGoogleによって対策されます。

正直者が損をする、そんなインターネットにしないためにも情報は責任をもって発信していくようにしましょう。

サイト貸しについてGoogleが公式見解を発表

2023年9月15日にGoogle の Gary Illyesさんがサブディレクトリ貸しについての発信をされました。

Googleはサブディレクトリ貸しについて認識しており、サブディレクトリを貸している側に対して警告を発信しています。

この発信の中で特に

  • サブディレクトリを貸した側もメインサイトのインデックスが外されるというリスクがある
  • メインサイトからサブディレクトリのサイトへの内部リンクの数も重要である

という2点が重要です。

特に2つ目はサブディレクトリで自社メディアを運営する際に、サブディレクトリ貸しと誤認されないために重要です。

メインサイトからサブディレクトリへのリンクが少ない場合は、メインサイトがサブディレクトリのサイトと実際には同一の発信者だと認識されたくない可能性があると判断されるため、自社でサブディレクトリでのメディアを運営する場合は、しっかりと同一運営者であることを認識してもらうためにもメインサイトからの内部リンクをつけるようにしたほうが良さそうですね。

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