応募者の8割以上が、動画を見てから応募してくる——“働く中身”まで見せると、動画は「応募を決める場」に変わる。早期離職が減った人材派遣会社さんの話

せっかく採用しても、数ヶ月で辞めてしまう。求人にお金も手間もかけたのに、また振り出しに戻る——採用でいちばんこたえるのが、この早期離職です。原因を「本人の問題」だと片づけてしまいがちですが、実際に多いのは、もっと手前の話。「入る前に思っていた姿」と「入って見た現実」のギャップです。
そして、このギャップは入り口で先回りしてつぶせます。求人の段階で“働く中身”まで正直に見せておけば、「良さそう」だけで来る人ではなく、「この会社で働けそう」と納得した人だけが応募してくる。入り口ですでにふるいがかかるので、入ってからの「思っていたのと違った」が起きにくい。ここで紹介するのは、ホームページとYouTubeで働く中身を徹底的に見せることに振り切り、面接で聞くと8割以上が「YouTubeを見た」と話すようになった、ある人材派遣会社さんの話です。
求人票では、「どんな人か」も「本当なのか」も分からない
この会社さんは、経営陣も平均年齢が20代という、若い立ち上げ期の会社でした。派遣で働く社員さんは全国にいて、募集の打ち出しは業界でもトップクラスの給与の高さ。条件だけ見れば、とても魅力的です。
ところが、条件が強いほど、求人票には別の壁が立ちはだかります。ひとつは、「実際にどんな人が、どんな雰囲気で働いているのか」が見えないこと。入社した人が最初にぶつかるのは、条件よりも「この職場の空気、思っていたのと違う」という感覚のズレだからです。
もうひとつが、「この条件、本当なのか」という“うさんくささ”です。給与が高いほど、求人媒体ではむしろ怪しく見えます。媒体はどこも数字を良く見せがちだと、応募者のほうも分かっているからです。実際、あとで転職してきた方に当時どう思っていたか聞くと、「正直、怪しいと思っていました」と話す人は少なくありませんでした。さらに、派遣という働き方そのものにも「不安定なのでは」という不安がつきまといます。

つまりこの会社の求人には、「人柄が見えない」「条件が怪しく見える」「働き方が不安」という、文字だけでは越えられない壁が、いくつも重なっていたのです。
こういう壁ほど、ホームページとYouTubeが効く
こうした壁は、求人票の書き方をどう工夫しても、なかなか越えられません。ここで効いてくるのが、ホームページとYouTubeです。「実際にどういう人が働いているのか」を、どこよりも分かりやすく見せる——この会社さんは、そこに振り切りました。
見せたのは、きれいに飾った会社紹介ではありません。営業社員の日々の営業活動そのものや、全国で働く社員さんへのインタビューです。これまで20人ほどに、どんな働き方をしているのか、なぜこの会社に入ったのか、前職から転職した理由は何か——を、飾らずに聞いて、動画と記事でホームページに載せていきました。
この会社では、社員さん一人に営業社員が一人つくマンツーマンの担当制で、その担当が一緒に派遣先を探していきます。だからこそ、「どんな営業社員が担当してくれるのか」という人柄が、働くうえで決定的に大事になる。その人柄まで、動画で先に見えるようにしたわけです。

「怪しい」「不安」は、当事者の声でしか消えない
文字で「うちは待遇がいいです」「安定しています」と書いても、良い条件ほど、逆に信じてもらえません。ここを埋められるのは、実際に働いている人の、飾らない声だけです。
たとえば「派遣は不安定なのでは」という不安。この会社の派遣は、正社員として雇用したうえで派遣する形で、給与や待遇は正社員と変わりません。それを会社が言葉で説明するより、実際に働いている人が普通に語っている姿を見せるほうが、ずっと安心につながります。
給与の“怪しさ”も同じでした。「怪しいと思っていました。でも実際は、前職より給料が上がったんです」——転職してきた本人がそう話す実写の映像は、求人票の数字より何倍も強い。媒体では盛って見えてしまう好条件を、当事者の実写がそのまま裏づけてくれるのです。

面接で聞くと、8割以上が「動画を見た」と言う
こうして中を見せ続けた手ごたえは、面接の場に、はっきり出てきます。
応募者に志望のきっかけを尋ねると、8割以上が「YouTubeを見て、雰囲気が分かったので」と話してくれる。
これは、採用にとってかなり良い状態です。中身を見て「この会社で働けそう」と納得した人だけが応募してくるから。「良さそう」というイメージだけの人や、「やっぱり怪しい」と感じた人は、応募の前に自分から離れていきます。入り口で、すでにふるいがかかっているのと同じなのです。
さらに言えば、ほぼ全員が動画を見てから応募しているという事実そのものに、大きな意味があります。動画は“新しい人に会社を知ってもらう入り口”ではなく、応募するかどうかを最後に決める場所になっている。しかも、そこでふるいにかけているのは会社ではありません。応募者自身が、動画を見た時点で「自分に合うかどうか」を判断しているのです。裏を返せば、もし中を見せていなければ、その8割の人は“中を知らないまま”面接に来ていた——早期離職の芽が、そっくりそのまま入り口に残っていたことになります。

正直に見せておくことが、辞めない採用への近道
中を分かったうえで応募してくれるので、入社後のミスマッチが大きく減りました。「思っていたのと違った」で早期に辞めてしまう、あの一番もったいない離脱が起きにくくなったのです。
採用は「数を集める」より「合う人に出会う」ほうが、結局コスパが良い。とくに条件を強く打ち出すほど、その条件が本当だと信じてもらい、働く姿まで見てもらう必要があります。好条件も、働き方への不安も、正直に中を見せておくことでしか越えられない。それが、辞めない採用への一番の近道だと、この事例は教えてくれます。条件のその先——「どんな人が、どんな空気で働いているか」まで見せられているかどうか。そこが、定着の分かれ道になっていることは、少なくありません。